地域の環境リスクをみんなで共有しよう

 5月26日に「第13回環境自治体会議東海村会議」の第5分科会「リスクコミュニケーション:原子力安全と環境保全に向けた対話と協働」に参加し、話題提供を行うとともに、ディスカッションに参加しました。原子力の発祥の地である茨城県東海村の中でも原子力の中枢である、日本で最初の商業用原子力発電所である東海発電所(現在、廃止措置中)の敷地内での分科会でした。原子力については、従来から環境リスクに対する認識が、原子力に対する漠然とした不安感の中に存在していますが、実際に地域住民が環境リスクに対する関心を高めたのは、事故が発生してからというのが事実のようです。分科会の話題提供では、原子力発電所が立地している東海村、柏崎市、松江市(旧鹿島町)におけるリスクコミュニケーションの試みが報告され、原子力のことを住民に積極的に伝えたい行政やNPOの思いと、対話の中で原子力の現状を理解し、地域の環境リスクに対する正しい情報を得ようとしている住民の熱い思いが伝わってきました。
 かわごえ環境ネットでは、PRTR(Pollutant Release and Transfer Register:化学物質排出移動量届出制度)に基づく化学物質に対する環境リスクを地域で共有するため、「環境コミュニケーション−知りたい、伝えたい、企業の環境活動」を、市民と事業者の間に立って展開しています。分科会では、かわごえ環境ネットのような環境パートナーシップ組織の重要性を説明するとともに、今後、事業を進める上での課題を語りました。しかし、原子力と比較すると、化学物質のリスクというものは、対象物質の多さと日常生活に深く入り込んでいることも相まって、あまり関心が払われていないのではないでしょうか。そういう私は、リスクコミュニケーションを何回か経験してきても、日常において化学物質に、漠然とした配慮を考えて入るものの、深い関心を抱いて生活してはいません。
 もうひとつ、東海村会議の翌日である27日に、旧山古志村(現在の長岡市)の被災地を訪れ、震災と積雪後の状況を自分の目で確認してきました。この訪問の経緯と現地の状況写真については、私のホームページ(http://team-6.eng.toyo.ac.jp/hkoseblog/002643.html)に掲載しています。現地を訪れて、人間の営みが止まってしまった光景を初めて目の当たりにし、地震から半年以上経過しても、時が止まったような被災地の変わらぬ状況に大きな衝撃を受けるとともに、野生の動植物が、豊かに生息している状況を見て、自然の強さと人間生活の弱さを強く実感しました。
 東海村の臨界事故にしても、新潟県中越地震にしても、地域の環境リスクに関する情報が十分に行き渡っていれば、減災(災害を減らすという意味)が可能であったと思われます。前者は、事業者と地域住民の間に大きな情報量の差があり、後者は、そもそも地震被害の予測情報がなかったことが、結果的に大きな災害につながったものと考えられます。
 たとえ、十分な情報があったとしても、世の中にはさまざまな情報があふれていて、日ごろ感じることのないリスクに対しては、関心をなかなか払うことができません。しかし、大事故が起こってからでは遅いことを2日間の経験により十分に理解するとともに、リスクコミュニケーションの重要性を改めて認識しました。地域の環境リスクを正しく知ることによって、災害に対する予防策や備えを進めるとともに、みんなで環境リスクに関する情報を共有し、話し合いを通じて、環境リスクを減らす努力をしていきましょう。
 かわごえ環境ネットは、地域の環境リスクに対する情報の整理をするとともに、地域の環境コミュニケーションを推進するために、活動を継続していく所存です。
(かわごえ環境ネット理事長・広報担当理事:小瀬博之)

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このページは、KOSE Hiroyukiが2005年6月 1日 01:13に書いたブログ記事です。

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