チョウから見える川越の環境 -2011年~2022年の記録-
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チョウから見える川越の環境 -2011年~2022年の記録-(PDFファイル、7.2MB)
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表紙
目次
- はじめに-12年間の歴史
- チョウのモニタリング結果から
(1)全体の結果から
(2)チョウの種数の変化
(3)この12年間で観察されたチョウの一覧
(4)チョウごとの出現時期
- 個別チョウごとの観察場所数と観察件数の変化
(1)アゲハチョウ科
(2)シジミチョウ科
(3)シロチョウ科
(4)セセリチョウ科
(5)タテハチョウ科
- 川越市内での主なチョウの分布
- 環境の違いによるチョウ
(1)メッシュコード内のチョウ
(2)寺尾調節池
- チョウによる環境指標
(1)「(仮称)川越森林公園」計画地
(2)寺尾調節地
(3)住宅地
- 川越のチョウの歴史
- 川越で見られるチョウたち
- 川越のチョウの未来は
(1)チョウの生態的地位は
(2)市内環境によるチョウの変化
(3)絶滅が心配されるチョウたち
(4)チョウを含む生きものを保全するためには
- まとめを発行するにあたって
はじめに-12年間の歴史
チョウはどこにでもおり、華麗に舞う。そのライフサイクルは食草に産みつけられた卵から芋虫の幼虫を経て蛹から変身して大空に羽ばたく身近で憧れの存在でした。しかし人の生活と共存してきたチョウが生息環境の変化で姿を消しつつあることを知りませんでした。あまりに人の生活の中で当たり前になっていたからでしょうか。
2008年頃から「埼玉昆虫談話会」が昆虫の移入種についての調査を始めており、移入種のチョウ-アカボシゴマダラ-が社会的な関心を持たれたのを機会に市内のチョウの調査が始まりました。2011年には埼玉県から講師を招いて「生物多様性講座」を開き、"川越市の生きもの"を考えるスタートとなりました。その後、かわごえ環境ネット自然部会の呼びかけで、2012年から講座参加者を中心にして市内のチョウの調査を開始しました。
2013年からはモニターのスキルアップと観察精度の向上をめざして「自然観察の手引き-川越のチョウ」(2018年に改訂)を発行してきました。同時に部会で、会員講師の猪俣昇氏の指導のもと、「水上公園」、「安比奈親水公園」、「(仮称)川越森林公園計画地」などで現地観察会を実施し、実際のチョウを捕獲しそれに触れて親しんできました。
2014年には川越市環境政策課が市民に呼び掛けて市内のチョウの調査を実施しました。2017年から埼玉県のモニタリング調査と合わせて市内の広範囲のチョウの調査を行ってきました。2017年からは川越市とかわごえ環境ネット自然環境部会が呼びかけた「市民生きもの調査」がスタートしました。そのために、指標種を中心とした生きもの調査(チョウも含む)をより広範囲の調査を行うことができました。2019年からは自宅周辺の定点観察からより広域的にかつ継続的にモニタリングを行ってきました。10年間のモニタリング結果は、「市民の力を集めた生きもの調査」-川越のチョウと昆虫の記録-(2020年3月13日)にまとめました。
その後、植物を中心にチョウを含めた「市民生きもの調査」が続けられて、チョウだけで6500件を超えるビッグデータとなりました。
調査にあたって、チョウは次の特徴を持っています。
①生態系の中で中位に位置する。
②食草から蜜源まで生育ステージに合わせて幅広い自然環境を必要とする。
③比較的緩慢に移動するので多くの人に観察しやすい。
④身近な生きもので親しみがあり関心を持たれやすい。
⑤人の生活に近い場所で見つかりやすい。
⑥全国的にも種数は240種ほどで見分けがつきやすい。
このような特徴からチョウは自然環境の変化に敏感なために環境指標として用いられています。現在、チョウの置かれている現状は、
①開発、汚染、乱獲、過剰利用など人間活動に伴う影響
②里山の荒廃など、人間活動の縮小や生活スタイルの変化に伴う影響
③外来生物や化学物質など、人間活動によって新たな問題となっている影響
④地球温暖化の進行が、生物多様性に与える影響
によって草原性や森林性のチョウが大きく減少しています。(「日本のチョウ」(日本チョウ類保全協会編)からの引用)
このために、市内のチョウの実態を把握してそれを記録として残し、市内の自然環境との関連を知ることが必要と考え、これまで継続した観察を行ってきました。これまでのデータを解析し、新たな知見を加えて、川越のチョウの12年間をまとめました。