川越の自然を訪ねて(30)チョウの紹介(その3)タテハチョウ

ヒオドシチョウ ---(仮称)川越市森林公園計画地にて
ヒオドシチョウ ---(仮称)川越市森林公園計画地にて

 今回はタテハチョウ科のチョウについて紹介したいと思います。

 タテハチョウ科のチョウは小形から大形まで、色彩もさまざまなチョウが多い。前あしが退化し、歩いたり着地したりするために使われることがないので、俗に足が4本のチョウといわれる。雄の前あしの部分は、たいてい毛で覆われているため、ブラシ毛のチョウと呼ばれている。
 かつては、テングチョウ類、マダラチョウ類、ジャノメチョウ類は独立した科とされていたが、最近ではタテハチョウ科ひとつにまとめられることが多い。主なチョウのグループはふつう13亜科に分けられるが、日本にはテングチョウ亜科、マダラチョウ亜科、タテハチョウ亜科、ジャノメチョウ亜科の4グループが知られている。

1.タテハチョウ科の分類
(1)テングチョウ亜科のグループ:日本ではテングチョウ1種のみ。天狗のようにつき出た鼻と、枯葉のような裏面をもつ風変わりなチョウである。北アメリカで第3紀の地層からこの仲間の化石が発見されている。
(2)マダラチョウ亜科のグループ:南方系のチョウで九州より北ではアサギマダラ1種のみが分布。ゆったりと、ほとんど羽ばたかず、リン粉が退化したはねに青空をすかしながら飛び上昇気流に乗って舞い上がる。1,000km以上の長距離飛行が確認されている。
(3)ジャノメチョウ亜科のグループ:地味な色合いで、幼虫はイネ科、カヤツリグサ科の植物を食べて育つ。裏面の模様が判別のポイントになることが多い。ヒメジャノメ、ウラナミジャノメ、ヒメウラナミジャノメ等、庭や道端でもよく見かける小さな地味なチョウが多い。
(4)タテハチョウ亜科のグループ:ヒョウモンモドキ、ヒョウモンチョウ、イチモンジチョウ、カバタテハ、ヒオドシチョウ、スミナガシ、イシガケチョウ、コムラサキ、フタオチョウの各仲間が含まれる大きなグループである。ヒョウモンチョウの仲間はよく似ていてややこしい。後ろばね裏側の模様が判別のポイントになることが多い。ヒオドシチョウの仲間は、成虫で越冬するものが多く、チョウの少ない季節に目につきやすい。イチモンジチョウの仲間は表面の白帯の数、形が判別のポイントである。日本の国蝶のオオムラサキもこの仲間で、あでやかで美しいはねをもつ種も多い。

2.タテハチョウ科の生活スタイル
(1)卵:球形、たる形、円すい形などさまざま。タテハチョウ亜科はいろいろなすじや模様があり、ジャノメチョウ亜科はつるりとした球形、マダラチョウ亜科はラグビーボール形が多い。
(2)幼虫:毛虫形からナメクジ形までいろいろ。タテハチョウ亜科では頭に2本の角をもつものが多く、ジャノメチョウ亜科は尾の先が2つに分かれている。マダラチョウ亜科はきれいな模様があり、肉状の突起をもつ。
(3)さなぎ:幼虫は枝や葉などに糸をはいてフックをつくり、そこに自分のおしりを引かけてぶら下がり、脱皮してサナギになる。

3.日本の国蝶 オオムラサキ
 日本人好みの彩りのオオムラサキは、カブトムシやクワガタムシと一緒にクヌギの樹液を吸うこともよくあるが、雑木林の王者たちに一歩もひかぬ堂々とした風格がある。雄は紫に輝くはねを広げ、大空を滑空、はばたくと羽音まで聞こえてくる迫力である。

 今回は国蝶のいるタテハチョウのグループを紹介しました。
(猪俣昇)