【コラム】川越の自然をたずねて(87)武蔵野の雑木林をこよなく愛した画家 千木良宣行氏

 「昭和41年。やっと就職が決まった31歳の私は、安い住宅を捜しまわっていて偶然武蔵野平地林を見つけ、その美しさに惹かれて川越に移り住んだ。それは後年、安定したサラリーマン稼業から貧乏画家を目指す運命の序曲だった。」(文芸誌「武蔵野ペン」173号(平成30年)の表紙として掲載された絵へのことばより一部引用)
 画家、千木良宣行(ちぎらのぶゆき)さんとは、数年前「(仮称) 川越市森林公園」計画地で初めてお会いしました。一心にスケッチなさっていて声をかけるのも憚られました。何度かお会いするうち個展の案内を頂き、足を運んでみるとまさに「驚愕」でした。私たちボランティアが作業中、フッと感じる風、光、緑の輝きがみごとに表現されているのです。
 しかし、残念ながらこの4月6日85歳で他界されました。千木良さんは55歳から独学で画業を極められ、多くの受賞もされています。春夏秋冬一瞬の美しさを切り取った多くの作品が遺されました。遺作展は来年になるのではと聞いています。遺族からお借りした武蔵野平地林の絵の写真を掲載します。
 自然へのアプローチの方法はいろいろです。雑木林のボランティアに関わっている方々も、その美しさに惹かれて汗を流すのでしょう。映画監督の原村政樹さんは歴史的変遷をふくめ、現在の姿の美を写し撮りました。千木良宣行さんは絵画に昇華されました。多くの人々の思いが自然を守る力になります。
(賀登環)

編者注:著作権の関係で絵は「月刊 かわごえ環境ネット 2020年7月号 No.165」のみで掲載しています。
https://kawagoekankyo.net/news/003195.html