【コラム】社会と環境について思うこと(3)気候変動と豪雨災害に思う

 今年の九州地方をはじめとする各地で水害をもたらした豪雨を「令和2年7月豪雨」と名付けたそうだ。球磨川流域や最上川流域でも豪雨災害が発生し、甚大な被害が出た。コロナ禍の中、復旧作業も各地からのボランティアを集められず、被災者は大変な思いをされたようだ。

 昨今の異常気象を見ると「気候変動(Climate Change)」より「気候危機(Climate Crisis)」の言葉が感覚的に合う。

 日本のみならず、中国長江流域でも大洪水に見舞われ、4500万人が被災したという。被害額は1兆8千億円とも云われている。世界最大級の三峡ダムも決壊の危機となり、その下流にある新型コロナ発生地で有名になった武漢も水没の危機にあったほどだ。

 こうした現象は、50年・100年に一度起こる異常気象ではなく、地球温暖化の影響で必然的に毎年のように起こる現象なのだ。というより、さらに激しい豪雨や巨大台風の襲来を覚悟しないといけない。

 梅雨時、太平洋高気圧と北側の冷たい高気圧に日本列島が挟まれ、東シナ海からの湿った南西風が太平洋高気圧に沿って吹き込み、梅雨前線が居座る。元々、東シナ海の海水温は過去100年で1.2℃上昇しており、これは地球全海洋温度上昇平均0.6℃よりも高い。さらに今年は、東シナ海南部と南シナ海の海水温が平年より1℃ほど高く、その分水蒸気が多量に供給された。海水温が1℃上昇すると水蒸気が8%増加すると云われており、線状降水帯の発生も含め、従来の経験からでは降水量を想定できないほどの豪雨が発生したのだ。

 実際問題として、気象庁の内部でも降水量予想値の発表で、専門家の意見が割れたそうだ。まだ、AIでも正確に予想しきれていないようである。

 今年もヨーロッパでは熱波が襲来し、パリでは40℃超えを記録し、スペイン各地でも40℃超えが続出しているとのこと。昨年も「フランスで最高気温46℃を記録した」とのニュースに驚いた記憶があるが、今年もヨーロッパの猛暑は大変なことだろう。日本も今年は、日本近海の海水温が高いことからして、猛暑、巨大台風を覚悟しないといけないかもしれない。

 本稿を書いている本日(8月11日)、群馬県伊勢崎市・桐生市、埼玉県鳩山町で40℃超えを記録したとのニュースが飛び込んできた。今年の夏は、どこまで猛暑が続くことか。この記事が発行されるころには、今夏がどんな気象状況だったかわかってくると思う。

 もう一つ、私にとって、「気候危機」を感じさせるニュースが飛び込んできた。シベリアのベルホヤンスクで6月20日に38℃という観測史上最高の気温が観測された。この北極圏にあるベルホヤンスクは、世界最低温度である氷点下67.8℃を記録した町で有名な寒冷地なのだ。こうした異常高温によりシベリア・北極圏の永久凍土が溶け始めている。

 シベリアでは、この永久凍土の上に構造物・建築物が建設されており、温暖化により数々の問題が発生し始めている。ノリリスク市では、火力発電所のディーゼル油タンクの土台が崩れて2万トンもの油が近隣の川に流出した。また、同市の高層アパートが傾いてガラスが割れたり、外壁が崩れたり、段々住めない状況が生じている。さらに、シベリア熱波で森林火災も発生し、2019年には3万km2が焼失した。何と日本の約12分の1の面積だ。永久凍土の溶解により、マンモスなどの古代動物の死体が見つかると同時に閉じ込められていた細菌が復活して新感染症が発生するリスクが出てきていると警鐘を鳴らす専門家もいる。

 また、凍土溶解に伴い大規模なメタンガスの発生も懸念されている。メタンの温室効果は二酸化炭素の25倍もあり、温暖化がさらに加速する可能性もある。メタンガスは二酸化炭素のように植物等に吸収されないので、温暖化が止められなくなる可能性もある。これは、人類滅亡への道につながることになる。

 「気候危機」の行末に思いを馳せていると「風が吹けば桶屋がもうかる」の言葉を思い出した。「風が吹く」⇒「ほこりがたつ」⇒「視力障害者が増える」⇒「三味線弾きが増える」⇒「ネコの皮の需要が増える」⇒「ネコが減り、ネズミが増える」⇒「桶がかじられ、桶の需要が増える」といったストーリーだ。

 異常気象は、差し詰め「電気を使えば・車に乗れば、豪雨災害を引き起こす」と云ったとこか。

 「電気を使うと火力発電所から二酸化炭素を放出する、車を使えば二酸化炭素を放出する」⇒「大気中の二酸化炭素濃度が上昇し、大気温が上昇する」⇒「大気温の上昇に伴い、海水温が上がる」⇒「海水から蒸発する水蒸気量が増える」⇒「降水量が大幅に増える」⇒「豪雨により川の氾濫(はんらん)を引き起こし、大災害が発生する」と云ったストーリーだ。

 それでは、二酸化炭素を発生させない生活とはどうすればよいのだろうか。

 我が家は、10年前に家中の窓をペアガラスの断熱仕様に変え、3.7kWの太陽光発電パネルを屋根に設置し、数々の省エネ対策と合わせエネルギーの自給自足をめざした。昨年(2019年)は年間を通じて、売電(売却電力)が2,264kWh、買電(購入電力)は2,249kWhで、電力についてはかろうじて自給自足はできた。一昨年(2018年)に比べ、台風の頻度も多く雨天が多かったため発電量が減り、ぎりぎり売電が上回ったものだ。

 年間を通じて、電力に関しては実質的に二酸化炭素を排出しない生活が達成できているが、まだ都市ガス分や車のガソリン分まではカバーできていない。蓄電池の設置やEV導入も検討したが、試算の結果まだまだ導入コストが高く採算性が合わないことから、別の方法を考えることとした。電力自由化が進む中、買電(購入電力)については自然エネルギー100%の電力への切り替えを検討している。「みんな電力」や「自然電力のでんき」等が自然エネルギー100%の電力を供給している。

 マンション住まい等で、自分で太陽光発電パネルを設置できない人でも自然エネルギー100%の電力を使うことは可能である。

 「気候危機」が迫る中、少なくとも自分自身は二酸化炭素を排出しない生活に近づけるべく努力・工夫をすべきと考える。

(宮﨑誠)