【コラム】川越の自然をたずねて(89)小畔川―川遊び・散策に適した里川

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御伊勢橋から下流を眺める

●概要

高麗丘陵の宮沢湖を水源とする小畔川は、川越市に入り、笠幡から福田の落合橋下流まで約10kmにわたり流れる荒川水系の一級河川です。水源である宮沢湖は、小畔川が浸食した谷を堰き止め、1941年(昭和16年)に完成したかんがい用貯水池です。その主水源は入間川で、飯能市小瀬戸地区からの5.4kmにわたる導水路から、毎秒1.3m3の用水が宮沢湖に流入しています。川の流域は伏流水が豊富で、水流が瀬切れを発生させることはありません。

●流域の見どころなど

笠幡地区の流域は実り豊かな水田地帯です。左岸の台地には日本武尊東征の折に創建されたと伝わる尾崎神社が鎮座しています。関越自動車道を過ぎたあたりで南小畔川を合流し、御伊勢橋まで下ると、左岸には「小畔水鳥の郷公園」が、右岸には「御伊勢塚公園」があります。公園周辺と川の土手に沿っては見事な桜並木が続き、花見の時期は多くの人出でにぎわいます。

御伊勢塚公園に隣接する「かほく運動公園」に面した水辺は、2010~2012年(平成22年~24年)の「水辺再生100プラン」によって、落差工の改善、ワンドの設置、散策路などが整備され、訪れる人達が安心して楽しめる親水公園になっています。住宅街にも近いこの公園一帯は、東上線霞ヶ関駅から徒歩約15分、駐車場もあり、アクセスがよいことから多くの市民の憩いの場となっています。このあたりで、川の水流幅は10mほど、水深は平常時で20~30cm、川底は平坦で、ほとんど礫(れき:小石)状態なので川に入っても泥に足を取られる心配がありません。高度経済成長期には、生活排水などが入り込み、水質悪化が懸念されたことがありましたが、現在は流域の本下水化が進み、水質も良好な状態を保っています。子供たちが川に入り遊んでいる姿もよく見かけます。川の規模が大きすぎず、小さすぎず、家族連れでも安心して川遊びが楽しめる貴重な水辺だと思います。

魚釣りに関しては、流域にフライフィッシャー、ルアーマンも多く見かけるようになり、釣り人が多い里川といった雰囲気があります。生息する魚類はオイカワ、ヨシノボリ、モツゴ、カマツカなどの在来種のほか、ブラックバス、ブルーギルなど外来種も増加しています。

かほく運動公園に面した水辺では毎年「小畔川の自然を考える会」とかわごえ環境ネットの共催で、「親子で魚とり」のイベントを開催しています。募集案内が出ると短時間で満杯になってしまうほど毎回盛況を博すようになりましたが、今年はコロナ禍により中止となりました。川遊びの機会が少ない子どもたちに、このような催しを通して、川で魚取りをする楽しさを知ってもらいたいと思い、毎年実施してきましたので、来年からの再開に期待しています。

かほく運動公園前からなぐわし地区に入ると、金堀橋の左岸には、きれいに整備された里山林を有する「東洋大学川越キャンパス」が目に入り、東側には旧鎌倉道の名残がある「市民の森第1号」があります。八幡橋下流には八幡神社が鎮座し、参道のふもとにある鳥居の脇には古くから清水が湧き続ける池があります。精進場橋の手前には温水プール、芝生広場などを備えた「なぐわし公園」があります。このように小畔川流域には、川や公園での遊び、歴史や自然散策、に適した場所が随所にあります。

川は、金堀橋下流になると100mを超える堤間となり、この規模は越辺川と合流するまで続きます。川辺には春はショカッサイ、セイヨウカラシナなどが一面に咲き、秋にはアシなどイネ科植物が群生し、ヒガンバナなども花を咲かせます。小畔川最後の橋となる鎌取橋付近から右岸側に入間川の土手が遠望されるようになってくると越辺川の右岸合流点まであと少しです。

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小畔水鳥の郷公園

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家族で魚取りイベント

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桜並木と散策路(御伊勢橋近辺)

(池田雄二)