【報告】会員の活動  川越市初「ナラ枯れ」感染木発生

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①根元に多量のフラス(木くず)

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②幹に2mm前後の丸い穴

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③枝の葉がしおれて枯れている

 2020年8月19日に、(仮称)川越市森林公園計画地内で異様なコナラを発見しました。

 ひょっとしたら「ナラ枯れ」かな?

 ①根元に多量のフラス(木くず)がある。

 ②幹に2mm前後の丸い穴が散見される。

 ③見上げると枝の葉がしおれて枯れている。

 8月23日に、上記フラスの中に体長5㎜にも満たない虫を発見し、川越農林振興センターに問い合わせました。「カシノナガキクイムシ(略称:カシナガ)」に間違いないとのことです。川越市内初の「ナラ枯れ」感染木の発見となりました。

 以降、計画地内を探し回り、9月20日現在79本の「ナラ枯れ」の疑いのあるコナラが見つかっています。

 そもそも「ナラ枯れ」とは、通称「ナラ菌」という糸状菌(カビの仲間)が、コナラの樹幹内でまん延し、導管(通水管)を詰まらせ木を枯らす「木の感染病」です。このナラ菌を背中に背負い木から木へ運ぶのが「カシナガ」です。体長5mmもない虫ですが、何百何千という集団でコナラの木に穿入し、1か月もたたないうちに枯らしてしまう「ナラ枯れ」を流行させる張本人です。

 カシナガの恐ろしいところは、今年コナラに穿孔し枯らしたカシナガが、次の年に数10頭以上の子供のカシナガを育て、それぞれが「ナラ菌」を背負って飛び出し、付近の健全なコナラに穿孔して、今年の数10倍以上のコナラに「ナラ枯れ」の感染を拡大させることです。

 「ナラ枯れ」の感染拡大防止には、今年感染したコナラを来年の5月までに、焼却やチップ化などを行い、カシナガを撲滅させることが大切です。

 そのため、今年中に「ナラ枯れ」の疑いのあるコナラを探し、埼玉県川越農林振興センター林業部(042-973-5620)まで連絡をお願いいたします。

 そもそもカシナガは、日本の固有種で昔から人と共に暮らしてきましたが、1980年代から「ナラ枯れ」が目立つようになりました。ちょうど燃料としての薪炭の需要が減り、里山の雑木林の伐採がされなくなり、高齢木が多くなるのと時期が重なります。カシナガは、大口径の高齢なコナラを好むようです。

 昔のように、頻繁に木を伐採し、若々しい森を維持すればいいのですが、現状の高木・老齢林を今後どのように手入れをしていくかみんなで考えたいところです。                                                     

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カシノナガキクイムシ(略称:カシナガ)

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このようなコナラの雑木林がナラ枯れの温床になるとは皮肉な話です。ナラ枯れ防止を徹底し、この素晴らしい雑木林を次世代に遺したいものです。

(注)「ナラ枯れ」は正式名称を「ブナ科樹木萎凋病」と言い、コナラをはじめ、ミズナラ、クヌギ、ウバメガシ、アラカシ、スダジイやクリなどブナ科の樹木に被害が見られます。

(山中和郎)